バッタリと

2005年11月6日
 何となく会う予感はしていたような気がする。
 
 彼はMさんと2人で、わたしはお勤めの途中で。
 3人とも一瞬ギョっとしてフリーズした。
 Mさんと連絡していることは彼には内緒だし。
 彼とのこの春の色々はMさんには内緒だし。
 そして彼らにもわたしに秘密の何かがあるかもしれない。
 
 でも、嬉しかったからニッコリ笑った。
 彼も笑った。
 今日もキレイにしていて本当に良かった。
 
 Mさんが気を利かせてわたしと彼を残して店に消えた。
 途端にわたしは何も言えなくなって、彼も何も言わなくて、ただ立ちすくんでいた。
 顔を見ると泣きたいような気分になってしまって、胸の辺りを見ると抱きつきたいような気分になってしまって、俯いて彼の足元ばかり見ていて。
 そして彼の靴は今日もキレイだと、そんなことも懐かしさを誘って苦しくなった。

 ごめんね、と彼が言ったから。
 首を振って、唇をうんと横に広げた。
 それは笑顔に見えただろうか。
 もう喉元まで涙が込み上げてきたので、仕事中だから戻るね、と言ってそそくさとエレベーターに乗り込んだ。

 その隙間から、彼がこちらを見ているのが見えて。
 わたしは締めるのボタンを押した指を開けるの上に置き換えて。
 でも、やっぱりいけない、とまた締めるを押した。
 
 店が終わる頃Mさんから電話があった。
 余計なことを口走りそうで、取らなかった。
 
 金曜と土曜はいつも彼が迎えに来てくれていた。
 その道を歩いていると、そこに彼がいるような気がして、だから右回して帰ることにした。

 ごめんなんて要らない。
 わたしのことは全部わたしのせいで、彼のことは彼のせい。
 

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