ミキちゃん、ミキちゃん。
 そう呼ぶ声の主は確実にわたしを見ている。
 でも、わたしはミキちゃんではないし、その声の主に見覚えもない。
 人違いだ。
 だけど、そのミキちゃんには心当たりがある。
 
 ホステスになって間もない頃。
 アフターで行く店やホステス御用達ドレス店なんかに行くと。
 あら、ミキさん久しぶり〜、なんて声をかけられることがよくあった。
 勤めていた店に来たお客さんにも。
 あれ、ミキちゃん店変わったの?とか尋ねられたりもした。
 元カレの友人Mさんも。
 初対面の時に誰かと間違えているらしく随分と辻褄の合わない話をするので面食らったのだが。
 それもミキちゃんだと判明。
 
 地元では老舗のクラブに勤めていること。
 公称している年齢はわたしと同じ歳だったこと。
 顔と背格好が似ていること。
 バイクで通勤していること。
 実家がわたしと同じ区内にあること。
 全く面識がないのに、誰彼となくそんなことを教えてくれたので。
 親近感まではいかないけど、うっすらと親しんでいたように思う。
 
 多分、そのミキちゃんに間違えているんだろうなあ。
 と思いながらも。
 違います、と言うしかなく。
 少し怪訝そうにわたしを見ていているその人を尻目に歩き去りながら。

 ミキちゃん、どうしてるのかな。
 なんて、一面識もない女性を少し懐かしんだ。

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