貞淑は妄想?

2005年7月1日
 この春に結婚した彼と会ってきた。もう10年を超える付き合いなので、ほとんど身内の感覚。一緒にいるとすごく楽しくて楽だ。
 結婚したことは正直ちょっと残念だけど、マメに連絡をくれるし変わらず会えるし飲みにも行けるから、あんまり支障がないので良しとしよう。

 散々飲んで喋って笑って、気が付いたら0時を回ってしまっていた。
 彼は新婚さんなので、あんまり遅くまで連れまわすのはいけない。
 もう帰ろうよ、と促すと。

 俺、おねえちゃんのいる店に遊びに行きたいからオマエだけ帰れ、と言って携帯をいじりだした。
 彼の「おねえちゃんの店に行く」というのは、お持ち帰りするということで、従って本日は外泊するということだ。

 奥さんが可哀相などと言うつもりはない。コイツは昔からこういう男で、それは奥さんも承知していないわけない。
 しかし、今日はいけない。一緒にいるわたしに対して失礼だ。

 欲情してるんでしょ?
 と、携帯を取り上げて彼の顔を覗き込んだ。
 うん、と言うので。
 でも無駄よ。アナタ今日はわたしを家まで送らなきゃいけないんだからね。若いだけのバカホステスとヤリたいんだったらその後で戻ってくることね。
 それは無理、勘弁して。と懇願されたが。
 無視してタクシーに手を上げてさっさと彼を奥に追い込み続いて乗り込むわたし。
 
 タクシーの中でも何だかんだと悪態をつくので。
 家に帰って奥さんとしたらいいじゃない。部屋暗くしてさ、お気に入りちゃんのことでも考えながらすると案外興奮するんじゃないの?と提案してあげたのに。
 そんなの無理。だいたいウチはセックスレスだもん。普通に嫁さんとセックスする女は別でしょ。

 まあ、それは一理あるし、その気持ちも良く解かる。
 でも、奥さんにも性欲ってあると思うんだわあ。それがダンナで満たされないなら他所でやってこようって思ってもおかしくはないよね。少なくともわたしだったらそう思うだろうなあ。

 ウチの奥さんはオマエとは違う。そんなタイプじゃない。
 彼はそう自信満々に言う。
 出た出た、と思う。

 沢山オトコの人を見てきたけどさ、あなたみたいな家庭内糖尿の人って結構多いのよ、しかも自分は遊び回ってるのに限ってね。寝物語にさ、奥さんも今頃、若い男を咥え込んでるかしらね、とか言うと、思いっきり嫌な顔すんの。
 で、決まり文句が、ウチのはそんなことするタイプじゃない。
 何を根拠に言ってるのか知らないけど、皆さん一様にそう言うんだよね。ああ、おかしい、笑えるよねえ。その無邪気さはどっから来るんだろう。
 まあ、願望として言ってるだけなら可愛いけどさ、本気で思ってるならそれって妄想の域に達してると思わない?
 
 彼はすっかりトーンダウン。
 追い討ちをかけるように、ちゃんと大事にしてる実績をつくればウチの奥さんに限って、っていうのも根拠があって説得力も生まれるって。まあ、頑張ってよ。
 と、タクシーを降りた。
 奥さん孝行だな、わたしって(笑)

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