「久しぶり〜」
 わたしは夜の駅構内を急いでいたけど、その声に足を止めた。
 こんなデブ知らない・・・でも何となく見覚えのある顔をマジマジと見ながら、記憶のページを捲る。
 わたしは怪訝な顔をしていたんだと思う。
 彼が名乗った。
 俺だよ、トシオトシオ。
 遠い記憶からその名前を引っ張り出して、目の前の顔から肉を削ぐと確かに17歳の時から2年程付き合っていた同級生のトシオだ。
 うわあ久しぶり〜、元気そうだね!!!
 やっと合点がいき、当たり障りのない近況報告を交わしたけど。

 しかしまあ、この変わりようはどうだろう。面影こそあるもののポッチャリしちゃって完全なオッサンだ。しかもスーツなんて着ちゃって。そのスーツが安っぽいのも哀愁をそそる。その社章はぱっとしない地元の二部上場企業のよね。アンタ、DJで生きていくんじゃなかったっけ?

 時の流れは残酷だ。
 わたしにも同じだけ流れた時間。
 言わない言葉の裏では、トシオもわたしに五十歩百歩の嘲笑を浴びせたことだろう。
 

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