我慢するか要求するか

　彼のことが大好きなフリをしている。
　それはとてもいたたまれない気分だ。

　ウソをつくとどうしても矛盾が出てきて自分が追い詰められたりするので、通常は本当のことをオブラートに包んで耳障りの良い言葉に変換する方をわたしは好む。
　彼のことは好きなのだけど、彼と同じボルテージを望まれている状況では、全然足りていないだろう。
　それを公然と認めるわけにはいかないでつくウソは心苦しく、そして見苦しい。

　あなたがいなくなったら、とても寂しいと思う。
　これはウソではないので、あとは好きに膨らませて好みの方向で自由に解釈してくれたら良いのだが。
　残念ながら彼は。
　それってどういうこと？
　などと、更に追い討ちをかける。

　そんな人が過去いなかったわけでもないけど。
　やだ、そんなこと言わせないでよ。
　と、恥ずかしがるフリするとか。
　調子にのりすぎよ。
　と、相手によっては高飛車に出てみるとか。
　喉渇いた〜。
　と、全く関係のないことを言うとか。
　なんだかんだで逃げのパターンは豊富に揃えているので、それ以上の追求をされたことはない。
　しかし、彼には通用せず、明確な言葉や約束をわたしから引き出すまで容赦なく追い詰める。
　遠慮も思慮もありはしない。
　
　それは、わたしにあしらわれる程バカではないが、騙されたフリをしてくれる程には人間が練れていないというでもある。
　もし彼が前者ならそもそも付き合うこともなかっただろう。
　そんな駆引要らずに付き合うのなら、最初から割り切るか、もしくはわたしがメタ惚れするかだが、それはどちらも今さら無理だし。

　わたしも本質的には変われはしないだろうけど、彼の意向に沿うようにはしているつもりなんだから、彼ももう少しわたしの意を汲んでくれないかなあ。
　なんて。
　例えば、そんなことを口に出して要求してみるとする。
　俺も最大限努力してるつもりだけど？
　なんて言われた日には、本当に性格が合わなさすぎという事で。
　その時キッパリ別れられるのか。
　そう思うと、それも無理。
　惹かれるものはやっぱりある。
　
　そういうの天秤にかけてみて。
　どちらが重要なのか。
　微妙なラインで判定不可。