彼の刻印

2004年12月3日
 Mさんとは、彼のいない所で随分と仲良くなった。
 真っ直ぐな心根の優しい男だ。
 彼とは違い、傾いた事業を立て直し、かつてのような生活を取り戻したのも、大したものだと思う。

 そんなMさんは、自分の会社で働く事を勧めてくれる。
 給料はそんなに出せないけど、実家から通えばいい。
 それでも足りないなら俺が個人的に出してもいい。
 だから、一日も早く戻って来い、と。

 地に足をつけた生活。
 それをMさんはいつもわたしに推奨する。

 でも、わたしはMさんの女の落とし方を知っている。
 安心で安全な人のまま、何の見返りも要求せず、徹底的に尽して尽して、そばにいる人の位置を確保してから落としにかかる。
 落としにかかる、というよりは侵食という方が正確かもしれない。
 「俺は顔も悪いし足も短いし頭も悪い。だから心で勝負するしかないもんな。」
 その言葉のとおり、Mさんなりのやり方で常に勝負をかけているのだ。
 
 女を本当に幸せに出来るのは、あんな男だと。
 Mさんを評して彼が言っていた。
 それには、わたしも同意見だ。
 
 だけど、どういう形にしろMさんのそばにいるのを彼が見たら、嬉しいと思うだろうか、悲しいと思うだろうか、それとも何とも思わないだろうか。
 そのどれでも、それぞれに辛い。
 いや、キレイ事はよそう。
 彼と再会の可能性があるのなら。
 いつでも参戦可能だという選択子は確保しておきたい。
 その時の意志で参戦しないという選択はあっても。
 ハナから状況により規制されてしまえば、深く深く後悔するだろう、と想像するに容易い。
 
 触れはするけど、つるつると滑ってこの手に掴みきれないもの。
 だからこそ、いつまでも飽きる事なく掴もうとするのだ。

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