キツネとタヌキ

　金を稼ぐというのは、ストレスも共に懐に抱くことだと思っている。
　高給なほどに高ストレスだ。
　
　店が落ち着くまででいいから。
　と、オーナーは言うけど。
　一度でも落ち着いた事なんてなかったじゃない、と思う。
　離れてみれば、蹴落とされ出し抜かれる事への危機感があるからこそ、より良いサービスを心掛けるというものだ。
　店も人も、トラブルなくして、成長は出来ない。
　落ち着かない状況、それが普通なのだろう。

　店に出たら、合コン行けなくなるもん。
　わたしが結婚出来なかったら、どうしてくれるんですか？
　などと言っていたら。

　オマエは言いたい放題やりたい放題なのに、なんで許されるんだろう、と言うので。
　それは可愛いからに決まってるでしょ、と言っておいたが、そんなわけはない。

　ママがくるとうるさいから、アッチ行って、とか。
　お姉さんより、わたしの方が好みでしょう？だって若いし、とか。
　そんな事を本気で言散らして許されるわけない。
　その為には、感じ悪いとか嫌味とか皮肉だとか思われないだけの下地づくりに労力を尽す事だ。
　ママやお姉さんがいない所では、客の前で本人達のことを褒めるのも基本だろう。
　ワガママも、相手が相好を崩すような種類のものしか言わないしやらない。
　あくまでもお客さまのそれぞれの懐の広さの中でやる事で。
　しかも、わたしが言いたい事ややりたい事では無かったりする場合が大半だけど、それが心をくすぐると踏めばやるだけのこと。
　それは、言いたい放題やりたい放題に見えるかもしれないが、サービスの一環でしかない。
　
　許される事しか言ってないのだから、許されて当たり前です、と。
　そんな事が言える立場、状況でもなければ、相手でもない。

　こんなストレスを溜めるから、イヤだっつってるんだよ!